没落貴族の母を持つ眞彦は、母を愛していました。母もまた眞彦を愛していました。しかし父はそんな母子への愛情が欠落していました。その父の愛情のなさ、自分勝手な行いのせいで、戦前戦後気苦労が絶えなかった眞彦は、いつしか心を閉ざし、表面的な人付き合いをするようになります。でも戦勝国人でありながら、敗戦国の人間である眞彦の為に最大限動くジェネシスとの出会いによって、眞彦の心は氷解します。金銭的な気苦労と、愛されることへの餓え、両方を満たしてくれるジェネシスは、眞彦にとってなくてはならない人になっていました。ですが…。「ラヴ ベクトル / 織末彬義」、アカプルコの月企画がお送りします。【作品形式:ノベル】
愛のない家庭で育った者に愛をくれた人。彼は遠い異国の人でした。
眞彦の母は没落したとはいえ、名門貴族の出でした。父は成り上がり大富豪の息子です。そんな2人が結婚して眞彦を授かったのですが、この家族はどこか歪でした。父はほとんど海外にいて、母子の前に姿を見せません。母は母で父が帰ってきたら、父へ一身を捧げるように寄り添います。滅多に会わない父に愛情が持てるはずがなく、また珍しく姿を現したと思ったら母を奪われたような気がして、眞彦は父が好きになれませんでした。しかも父は母子を放っておいた間、遠い地で別の家族を作っていたのです。弟は己の母を喪っていましたが、眞彦は母から父を奪い、自分とは違い溢れる程に父の愛を受けてきた異母腹の彼など、到底受け入れられはしませんでした。
眞彦は殊更に弟、アディを避け続けます。戦時中ともあって、外国人の弟がいるというだけで、眞彦が積み上げて来たものが崩され、蔑ろにされていれば、余計にそうなろうともいうものです。その鬱憤はいつしか分厚く積み重なり、ある日眞彦は弟に怪我を負わせてしまいます。それが父との決裂をもたらす決定打となりました。父は弟だけを連れて海外へ行ってしまいます。その上眞彦は戦敗国となった日本の地で艱難辛苦することになります。愛の乏しい家庭環境、周囲からの心無い中傷、それは眞彦を頑なに変えていきました。ですが、その眞彦の心を温かくしてくれる人物が現れます。名はジェネシス。彼は他の人間と違い、溢れる程の愛を眞彦に与えてくれました。「ラヴ ベクトル / 織末彬義」、幸せな時間が流れていきます。しかしその愛を揺るがしかねない重要なことに眞彦は気がついてしまいました。
タイトル | ラヴ ベクトル / 織末彬義 |
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ブランド | アカプルコの月企画 |
価格(税込) | 1,080円 |
発売日 | 2016年02月29日 |